マーケティングには「バリュープロポジション」が求められる時代となり、
バリュープロポジションの創出には「3C分析」が欠かせません。
ではバリュープロポジションや3C分析とは何なのか、バリュープロポジションは
どうやって創出するのか、USRとの違いは何なのかなどについて詳しく見ていきましょう。
バリュープロポジションは「自社にしか提供できない価値」
マーケティングにおけるバリュープロポジションは、
「自社にしか提供できない価値」を意味します。
ただし提供する側から価値を押し付けるのではなく、
顧客が求めているものに対する自社にしか提供できない価値でなければいけません。
例えば洗濯機に
・水だけでもキレイに洗濯できる
・大幅な節水ができる
・洗濯槽が常に清潔に保てる
などの新しい価値が付いていると、
顧客は多少価格が高くても新しい価値の付いた洗濯機を選んでくれるのです。
機能を増やすのではなく、
ややこしい機能を全て排除して安価にすることも新しい価値を付けることになります。
既存の製品に限らず新しい製品にも自社にしか提供できない価値を付けて
他社と差別させることがバリュープロポジションの創出なのです。
3C分析とは
バリュープロポジションの創出には「3C分析」が欠かせません。
3Cは
・Customer(顧客)
・Competitor(競合)
・Company(自社)
のことで、この3つを分析することでバリュープロポジションを作り出すことができます。
製品に対して顧客が求めている価値、競合他社が提供している価値、
自社が提供できる価値を考えます。
顧客が求めている価値と自社が提供できる価値が交わる部分から
競合他社が提供している価値を除いた部分がバリュープロポジションとなるのです。
顧客が求めている価値は顧客に聞く
バリュープロポジションを作り出すのに必要な顧客が求めている価値は
顧客に聞くのが一番手っ取り早く確実です。
自社製品をよく利用している顧客にアンケートなどで「同じような製品がある中で
どうして自社製品を選んだのか」を聞きます。
提供する側と利用する側で意識にズレが生じることはよくあって、
自社が推すストロングポイントを顧客は何とも思っていないこともあります。
反対に自社は当たり前で何とも思っていないことが、
顧客にとっては製品を選ぶ際の最重要ポイントになっていることもあるのです。
利用者目線の意見を聞くことで、自分たちだけでは気付かなかった
自社にしか提供できない価値に気付けることがあります。
新しい製品で顧客が居ない場合は、
家族や友人などに実際使ってもらって意見を聞くのも1つの方法です。
SNSを駆使してモニターを募る方法もありますし、
予算に余裕があるならマーケティング会社に調査を依頼するのも良いでしょう。
競合他社の分析
自社にしか提供できない価値を創出するには、
競合他社がどういった価値を提供しているのかを知る必要があります。
ネット全盛の現代においては「ホームページ」が重要なアイテムで、
利用者の多くはホームページで製品情報を得ています。
ホームページなどで得た情報を元に、
色んな製品を比較してどれを購入するか検討しているのです。
競合他社がどういった価値を提供しているかを知るには、
競合他社のホームページをチェックしましょう。
競合他社のホームページから
・取り扱っている製品の種類
・製品の価格
・送料
・購入した製品を発送するまでの時間
・製品の特長
・宣伝方法
などをチェック、利用者目線で何に惹かれるのかを分析します。
日用品などであれば、実際に競合他社の製品を購入して使ってみるのも
良いかもしれません。
利用者目線で競合他社の製品をチェックすることで、
競合他社の強みや自社との違いが見えてきます。
自社の分析
孫氏の兵法書には「彼を知り己を知れば百戦して危うからず」という一節があります。
これは戦いにおける必勝法のことですが、マーケティングも同じで
競合他社のことだけでなく自社のことを知っていないと競争には勝てません。
顧客に対して自社にしか提供できない価値を知るには、
顧客からの情報を元に社内で話し合いを重ねることです。
顧客の分析で「自社の製品を選ぶ理由」を聞きましたが、
その中に自社にしか提供できない価値のヒントがあります。
提供する側と利用する側で意識にズレがあるように、
提供する側の中で人や立場によって意識にズレが生じていないとは言えません。
同じ顧客の意見を聞いても人によって感じることは違いますし、
直接顧客と接する営業社員と社長では感じることが違ってきます。
社内で意識があっては顧客に対して新しい価値を提供できませんから、
話し合いを重ねて自社にしか提供できない価値を一本化するのです。
バリュープロポジションとUSPの違い
USPは「Unique Selling Proposition(Point)」の略で、
直訳すると「唯一無二の売りの提案」となります。
要するに独自性や自社にしか提供できない売りのことであり、
バリュープロポジションとほぼ同じ意味です。
実際にバリュープロポジションとUSPを同義とするケースも多いのですが、
厳密には少し意味が違います。
USPは「Selling Proposition」なので販売を目的としたフレームワークです。
簡単に言うと、「この製品を使うとこんな良いことがありますよ」と直接的にメリットを
顧客に伝えるのがUSPです。
対してバリュープロポジションは「バリュー」すなわち「価値」の提供を目的とした
フレームワークとなります。
一口に「価値」と言っても意味は広く、提供する側の価値もあれば利用する側の価値も
ありますし、利用する側の中でも人によって感じる価値が違います。
USPの創出は比較的単純な作業でできますが、
バリュープロポジションの創出には複雑な作業が必要となのです。
短期視点と長期視点
USPが短期視点であるのに対して、
バリュープロポジションは長期視点という違いもあります。
USPは販売を目的としたフレームワーク、
すなわち「宣伝効果のアップ」や「売上アップ」に繋がるものです。
特定の製品の売上アップは企業にとっては短期戦略であり、
長期的な展望に沿ったものではありません。
言い方は悪いですが、
「この製品を売るためにどうすれば良いのか」だけを考えるのがUSPなのです。
バリュープロポジションは価値の提供であり、
その究極的な目的は「企業のブランディング」にあります。
要するに「この企業の製品は買って損は無い」「間違いない」という価値観を
顧客に植え付けるための長期視点に立った戦略です。
バリュープロポジションを創出するメリット
バリュープロポジションを創出することは簡単ではありませんが、
創出することで大きなメリットが得られます。
1つには「自社にしか提供できない価値が明確になること」です。
自社にしか提供できない価値が明確になれば、
競合他社と無意味に競争する必要がなくなります。
要するに過剰な価格競争をしなくても良くなるので、
安定した売り上げが見込めるようになるのです。
売り上げが安定すれば供給も安定しますから、大量に在庫を抱えることになったり
品薄で売りたくても売れないといった状況になることがありません。
顧客との意識のズレが修正できる
バリュープロポジションを創出することで、
自社の製品を購入する顧客との意識のズレが修正できます。
自社が強みと思っている部分に顧客は何の魅力も感じていないこともあります。
反対に自社にとって何でもないことが顧客にとっては
非常に重要で大きな魅力となっていることもあるのです。
こうした意識にズレをそのまま放置していると、
顧客が求めているものが提供できなくなり、結果的に衰退を招いてしまいます。
バリュープロポジションは「顧客が求めている価値」を元に作り上げていきます。
顧客が求めている価値を元としたバリュープロポジションが作ることで、顧客との意識に
ズレがなくなって顧客が求めるものを提供し続けることができるわけです。
バリュープロポジションを作る際に注意すること
バリュープロポジションを作る際に注意しないといけないのが
「客観的な情報を用いること」です。
バリュープロポジションは顧客が求めている価値を元に作っていきますが、
顧客が求めている価値が客観的な情報を元にしたものでなければいけません。
「顧客はこう思っているだろう」「こう考えているだろう」など自社側の視点からの情報が
元になっていると、顧客第一ではなく自社第一となってしまいます。
要するに自社にとって都合の良いバリュープロポジションとなってしまうのです。
自社にとって都合の良いのバリュープロポジションでは、
顧客に対して自社が考える自社の強みを押し付けることになります。
顧客との意識のズレも修正できないので、顧客の求める価値の提供ができません。
バリュープロポジションは自社にとって都合の良いことだけでなく、
耳の痛いことも含めた客観的な情報を元に作ることが必要不可欠です。
バリュープロポジションは適宜作り直す
バリュープロポジションは一度作ったら終わりではなく、
状況に応じて適宜作り直す必要があります。
既存の製品とは違う価値を持った新しい製品を売り出す場合には、
既存の製品に適したバリュープロポジションでは対応できません。
時代の流れによって顧客の消費行動に変化が起こることもあり、
こうした場合にはバリュープロポジションを作り変えないといけないのです。
バリュープロポジションの作り直しが必要かどうかを見極めるためにも、
顧客に対するマーケティングは絶えず行っておきましょう。
まとめ
バリュープロポジションはあくまで顧客との意識のズレを修正して、
顧客が求める価値を提供するために作るものです。
顧客のことを第一に考えて、自社にとって都合の良いだけの独りよがりな
バリュープロポジションとならないように気を付けましょう。