「質の良い商品を作ったけど全然売れない」といったことがありますが、
それは商品の「認知獲得」ができていないからです。
では企業自体や商品・サービスの認知度を高めるにはどうすれば良いのかについて
詳しく見ていくとともに認知獲得の実例を紹介しましょう。
業績を上げるには認知獲得が必要
企業の業績を上げたり、商品やサービスの売上を上げるには、
まず認知獲得が必要です。
消費者の購買行動モデルを示すマーケティング用語に「AISAS」というものがあります。
(https://dentsu-ho.com/articles/3100)
AISASは
・Attention(認知、注意)
・Interest(関心、興味)
・Search(検索)
・Action(行動)
・Share(共有)
の頭文字を組み合わせた造語で、
消費者はAISASの順でモノやサービスを購入・利用していることが多いとされます。
実際に自分が新しい商品やサービスを購入・利用する際のことを考えると、
確かにAISASに当てはまると分かるはずです。
例えば新しく発売された商品をTVやネットのCMで見かけたとすると、
「新しい商品が出たんだ」と新商品が発売されたことを「認知(Attention)」します。
その新商品のCMを頻繁に見かけたり、実際に販売されているところや
使っている人を見たりすると、その商品に対して「関心(Interest)」が湧いてきます。
関心を持つと「どういった商品なのか」といったことが知りたくなって、
ネットでその商品のことを「検索(Search)」するのです。
商品について検索して「これ良さそう」となったら、
実際に購入するという「行動(Action)」に移します。
使ってみて「これ良い」となると、口コミやSNSなどで商品に関する情報を発信して
他の人に「共有(Share)」することになるのです。
共有によって他の人が商品を「認知」して「関心」を持ち、
といったようにAISASのサイクルが続いていきます。
代表的な購買行動モデルの最初の一歩が「認知」であり、
まずは広く知ってもらうことが最終的な購入という行動に繋がるわけです。
知ってもらわないことには購入・利用してもらえないので、企業にしても
商品・サービスにしてもまずは知ってもらうこと「認知獲得」が必要なのです。
認知獲得の戦略
闇雲に宣伝したところで認知度は向上せず、
代表的な購買行動モデルであるAISASのサイクルは生まれません。
認知度向上を目指すには、まず認知獲得の目的や目標を定める必要があります。
認知獲得自体が目的・目標だとアプローチの仕方やアプローチの対象が曖昧ですが、
目的・目標を定めておくと誰に対してどういったアプローチをすべきかが見えてきます。
例えば企業自体の認知度を上げる場合、
最終的な目的・目標は「企業イメージの向上」や「企業ブランドの確立」です。
企業イメージ向上・企業ブランド確立が目的だと、
認知獲得のアプローチ相手は一般消費者に加えて取引先である他企業となります。
これまでの取り組みやこれからの方向性といった企業の「来し方行く末」を
アピールするなど、信頼を勝ち取るためのアプローチの仕方を考える必用があります。
商品・サービスの認知度を上げる場合は、最終的な目的・目標は「売上アップ」です。
商品やサービスの購入者・利用者となる一般消費者や企業をターゲットにして、
商品やサービスの魅力を伝えるアプローチをしないといけません。
何のために認知獲得を目指すのかを考えることで、
おのずと宣伝の対象や宣伝の方向性が見えてくるのです。
強みの理解と差別化
アプローチする対象とアプローチの方向性が大体見えてきたら、
自社や自社の商品・サービスの強みの理解に努めます。
他社や他社の商品・サービスにはない自社ならではの強みを前面に押し出して
アピールすることで、差別化を図るわけです。
既存の企業や商品・サービスと違いがないのであれば、他社や一般消費者は
すでに信頼を勝ち取っている既存の企業や商品・サービスを選びます。
既存の企業や商品・サービスに取って代わるためには、
既存の企業や商品・サービスに無い強みをアピールしなければならないのです。
差別化するには、まず自社や自社の商品・サービスを見つめなおして、
どこに既存のものとは違う強みがあるのかを理解しておかないといけません。
既存のものとの違いを打ち出すことで、
AISASのサイクルで言うと認知の次の興味を持つ段階に進みやすくなります。
競合の分析
自社や自社の商品・サービスの強みが理解できたら、
次は競合相手となる他社や他社の商品・サービスを分析します。
競合相手にはどういった強みがあるのか、自社や自社の商品・サービスとは
何が違うのか、顧客に対してどういった価値を提供しているのかを分析するのです。
さらに競合相手がどういった方法で認知獲得をしているのかも分析することになります。
競合相手のことが分かれば、同じ土俵に上がって真っ向勝負するのか、
違う角度からアプローチするのか、認知獲得の具体的な方向性が見えてきます。
ペルソナの設定
競合相手を分析して認知獲得の方向性が見えてきたら、次は「ペルソナ」の設定です。
ペルソナは簡単に言うと認知度向上の対象いわゆるターゲットのことです。
ただ大まかなターゲットとは違って、
架空ではあるものの実在していそうな具体的な企業像・人物像がペルソナとなります。
例えば、
20代後半から30代の男性をターゲットとした化粧品の認知獲得を目指すとします。
20代後半から30代の男性ではあまりもターゲットが広すぎて、
最適なアプローチ方法が見えにくいです。
そこで
・29歳男性
・独身(彼女ナシ)
・中堅メーカー勤務
・都内のマンションで一人暮らし
・地方公立大学を卒業後、就職で上京
・趣味はドライブ
・悩みは電気カミソリでヒゲを剃ってもヒリヒリして赤くなるほど肌が弱いこと
といった架空だけど実在しそうな具体的な人物像をペルソナとして設定します。
ペルソナを設定することで、その人物がどういったことに興味を持ちそうか、
どういったアプローチ方法が効果的かが見えやすくなります。
ペルソナが興味を持ちそうなことや効果的なアプローチ方法が見えたら、
より具体的な宣伝やプロモーションの方法を考えるのです。
認知獲得の実例
実際の企業や商品・サービスが、
認知獲得のためにどういった施策を行っているのか実例を紹介しましょう。
企業イメージの向上や企業ブランドの確立を目的として企業自体の認知獲得を
目指したのが「大阪高速電気軌道(大阪メトロ)」です。
(https://online-soudan.jeki.co.jp/works/strategy_design/osakametro/)
大阪市営地下鉄を民営化するに当たって、
これまでの市営地下鉄のイメージを一新する必要がありました。
同時にこれまでの市営地下鉄と同様に、
安心して利用してもらえることもアピールしなければいけません。
「走り続ける、変わり続ける」というコンセプトを打ち出して、
イメージを一新するとともに安心して利用してもらえることをアピールしたのです。
ターゲットを明確にした認知獲得
ターゲットを明確にした認知獲得施策を行っているのが「菓匠三全」という企業です。
宮城県の企業で、仙台銘菓「萩の月」や「ずんだ茶寮」で企業としての
イメージやブランドはしっかりと確立されています。
しかし将来的なブランド継承のため若年層へのアプローチ強化として、
人気アイドルグループ「乃木坂46」のメンバーを起用したプロモーションを展開します。
(https://miyagisendaitabishiori.themedia.jp/)
プロモーションは現在進行形ではあるものの、コラボイベントは好評で
着実に若年層に萩の月やずんだ茶寮が浸透し始めているのです。
最適なアプローチ方法による認知獲得
ターゲットに最適なアプローチ方法による認知獲得を目指したのが「花王」です。
下着にスプレーするだけでトイレ後のズボン染みがブロックできる
「リリーフ メンズブロック」という商品の広告を駅構内のトイレで展開しました。
(https://online-soudan.jeki.co.jp/works/media_planning/kao/)
30代以上の男性の3人に1人がトイレ後のズボン染みを経験しているものの、
対策を講じていない人がほとんどです。
実際にズボン染みを経験しても、その時に「しまった」と思うだけで時間が経つと
忘れてしまって対策に考えが至りません。
そこで駅構内のトイレに広告を展開することで、
トイレ後のズボン染みの対策に考えが至るようにしたわけです。
まとめ
企業のイメージやブランドを確立させる、商品・サービスの売上をアップさせるには、
まず企業や商品・サービスのことを知ってもらわないといけません。
知ってもらうためには闇雲に宣伝するのではなく、
戦略的な認知獲得施策を行うことが重要です。
認知獲得はすぐに成果は出にくいですから、
多少コストに見合わなくても長期的な視点に立って行うようにしましょう。