単純接触効果は恋愛だけじゃなくビジネスにも使える

接触を繰り返すことで親しみが湧くという「単純接触効果」は
一般的に恋愛で利用されることが多いですが、実はビジネスでも利用できます。

では単純接触効果とは具体的にどういったものなのか、
ビジネスでどのように利用するのかなどをできるだけわかりやすく見ていきましょう。

単純接触効果とは

「単純接触効果」とは、特定の人物や物事に繰り返し接触することで、
その人物や物事に親しみが湧いて好感度が高まる心理的傾向のことです。
(http://jsre.wdc-jp.com/emotion/pdf/es01_1/81-86.pdf)

1968年にアメリカの心理学者ロバート・ザイオンスが提唱したもので、
「ザイオンス効果」とも言われます。

例えば、最初はよそよそしかったクラスメイトと毎日顔を合わせて会話する内に
段々と仲良くなるというのも単純接触効果です。

2000年前後に「さかなさかなさかな~」という歌詞の「おさかな天国」という歌が
話題となりました。

スーパーの鮮魚売り場などで流れるおさかな天国を頻繁に耳にする内に多くの人が
自然と覚えて口ずさむようになりましたが、これも単純接触効果と言えます。

ちなみにおさかな天国は1991年に魚食普及の一環として制作され、CDが再販された
2002年にはオリコンの週間チャートで最高3位、年間チャートで42位を記録します。

おさかな天国のヒットはまさに単純接触効果によるもので、
ビジネスにも使えることの証明にもなるのです。

繰り返し接触することで親しみが湧くのはなぜ?

単純接触効果が発生する仕組みは明確には解明されていませんが、
「知覚的流暢性誤帰属説」が有力と現状では見られています。
(https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/144956/1/ykyok00044.pdf)

簡単に言うと、特定の人物や物事に繰り返し接触することで、
その人物や物事に対する知覚情報の処理能力が上がります。

知覚情報の処理がスムーズに行われるようになることで、
脳がその人物や物事を肯定的に捉えるようになるのです。

親近感が湧いたことを脳が「好意」と認識することで、
単純接触効果が発生するという仕組みです。

単純接触効果をビジネスに応用する

おさかな天国の例からもわかるように、
単純接触効果はビジネスにも応用することができます。

単純接触効果をビジネスに応用した典型的なものとして挙げられるのが「TVCM」です。

例えばドラマやバラエティなど1時間番組を視聴していると、
合間合間にスポンサーのCMが繰り返し流れます。

同じCMを繰り返し見ることで企業や商品に対する認知度が上がり、
さらには興味が湧いてきます。

スーパーやコンビニなどで買い物をしている時に、CMで興味を持った商品が
並んでいるとついつい手に取ってしまうといったことも少なくありません。

商品を手に取った人の何割かは実際に購入しますから、
TVCMの単純接触効果によって売り上げを記録したことになるわけです。

以前に比べるとTVの視聴機会が減っており、
CMの単純接触効果も昔ほどは期待できないとされています。

しかし現在でもTVから情報を得ている人の数は少なくありませんから、
現状でもTVCMの単純接触効果は大いに期待できます。

ネット広告

単純接触効果がビジネス利用されているものとして、
もう1つ「ネット広告」が挙げられます。

Webサイトを閲覧しているときに画面の左右などに表示される広告のことです。

先のTVCMについては、
何のCMが流れるか、どんな順番で流れるかは視聴者側とは関係がありません。

しかしネット広告に関しては、
Webサイトを閲覧しているユーザーの行動と深い関係があります。

ネット広告の多くはランダムに表示されているわけではなく、ユーザーが以前に
検索した内容や閲覧したサイトに関連したものが表示されるようになっているのです。

いわゆる「リターゲティング広告」と言われるものです。

例えばスマホについて頻繁に検索していると、
スマホの機種販売や回線事業者のネット広告が表示されるといった具合です。

検索や閲覧をしている時点でその商品やサービスに興味を持っていますから、
ネット広告で繰り返し触れることで利用したい気持ちが大きくなる可能性があります。

ネット広告をクリックして商品を購入したり、
サービスの利用申し込みをするといったケースも実際に少なくありません。

リターゲティングされた広告がクリックされる確率は、
リターゲティングされていない広告の10倍となっています。
(https://blog.leapt.co.jp/retargeting-ads-cost)

SNS

SNSは商品やサービスを提供する企業側と利用するユーザー側が直接接触できる
ツールであり、単純接触効果が期待できます。

SNSではフォローされるなどユーザーと直接繋がらないことには、
単純接触効果はそれほど期待できません。

しかしフォローなどで直接繋がると、
アカウントにアクセスしなくてもタイムラインに投稿が表示されるようになります。

企業やブランドの名前、ロゴをタイムラインで頻繁に見かけることで、
単純接触効果による好感度向上が期待できるというわけです。

ただしタイムラインは投稿が時系列に表示されますから、
単純接触効果を期待するならSNSでの積極的な情報発信が必要です。

訪問営業

単純接触効果はネット上の施策だけでなく、
訪問営業という対面での施策でも期待できます。

実際に訪問営業をしたことがあるとわかりますが、初めての相手に飛び込みで
営業をかけても何かしら成果が得られることはほとんどありません。

しかし何度か同じ相手を訪問していると、
「また来たのか」とこちらの顔を覚えてくれるようになります。

顔を覚えてもらえると「一度ぐらいは話を聞こうか」となって、
何かしらの成果に繋がる可能性が出てくるのです。

ただ短期間に繰り返し訪問すると、単純接触効果で好感度が上がるどころか
反対に「しつこい」など良くない印象を持たれてしまう恐れがあります。

訪問する頻度によっては、良くない印象を持たれるという逆の単純接触効果が
発生することもあるので注意してください。

ビジネスに単純接触効果を利用する場合の注意点

ビジネスに単純接触効果を利用する場合には、
いくつか注意しなければならないことがあります。

1つは「接触の回数」です。

単に接触の回数が多ければ多いほど良いというわけではなく、
プラスの単純接触効果が期待できるのはせいぜい10回の接触までとされています。

3~5回の接触では好感度が向上するケースとしないケースでバラつきがありますが、
10回接触するとプラスの単純接触効果が表れるケースが多くなります。

ところが10回を超えると、
接触する回数が増えるごとに好感度が下がっていってしまうのです。

1人のユーザーに対して10回ほど接触して商品の購入など具体的なアクションを
起こさない場合は、単純接触効果は見込めないと判断しましょう。

単純接触効果が見込めない相手に繰り返し広告を見せると、
かえって逆効果で自社の情報に一切触れてくれなくなる恐れもあります。

全く興味が無いユーザーに興味を持ってもらうことは難しい

自社の製品やサービスに対して全く興味が無いユーザーには、
単純接触効果はほとんど期待できません。

例えばスマホについて頻繁に検索している人に対してファッションやグルメの広告を
繰り返し表示しても、広告を見てもらうことすら難しいです。

自分がネットを利用しているときのことを考えるとわかりますが、
興味ない広告はハッキリ言って邪魔でしかありません。

見てもらえなければ単純接触効果も期待できませんから、
自社に興味の無いユーザーに対して広告を打つのは効率的ではないのです。

ネガティブなイメージは払拭できない

自社に興味ゼロのユーザーを振り向かせることすら難しいですから、
マイナスのイメージを持っているユーザーを振り向かせることはもっと難しいです。

そもそも単純接触効果にはネガティブなイメージを払拭する効果は期待できません。

不祥事や商品の不評などで自社のイメージが下がっているときに、繰り返し宣伝しても
マイナスイメージをプラスイメージに変えることはできないということです。

「しつこい」となって余計にマイナスイメージが強くなってしまうので、
マイナスイメージを持っている相手に対しては慎重な接触が求められます。

まとめ

単純接触効果は繰り返し接触することで親近感や好感度が向上する心理的傾向で、
ビジネスにも利用できます。

ただ相手によっては繰り返し接触することが逆効果になることもありますから、
ビジネスに単純接触効果を利用する場合には注意も必要です。