STP分析で競合の一歩先を行く

マーケティング戦略を考える際に、
「STP分析」というフレームワークが頻繁に使われています。

ではSTP分析とはどういったものなのか、
何に役立つのかなどについてできるだけわかりやすく見ていきましょう。

STP分析はマーケティング戦略策定の代表的なフレームワーク

STP分析は、
マーケティング戦略を策定する際に用いられる代表的なフレームワークの1つです。

アメリカの経営学者で「マーケティングの神様」とも言われるフィリップ・コドラーによって
提唱されました。
(https://www.diamond.co.jp/book/9784478502372.html)

STPは「Segmentation」「Targeting」「Positioning」の頭文字を取ったものです。

上記の3要素を分析することで、自社や自社の製品・サービスの市場での立ち位置が
明確となってマーケティング戦略が立てやすくなります。

STPは分析する流れも示していて、まずSegmentationで市場の全体像を把握、
Targetingで狙いを定めて、Positioningで自社の立ち位置を決めるといった具合です。

Segmentationは市場の細分化

Segmentationは直訳すると区分で、
STP分析においては「市場の細分化」する作業のことを指します。

それぞれの企業が独自の指標を使って細分化するケースもありますが、一般的には
 ・人口動態変数
 ・地理的変数
 ・心理的変数
 ・行動変数
という4つの指標を使います。

「人口動態変数」は、年齢や性別、職業、収入、家族構成など
消費者の客観的な特性のことです。

要するに、自社や自社の製品・サービスの市場の消費者は男性が多いとか
高齢者が多いなどといった形で細分化するということです。

「地理的変数」は、国や地域、都市など消費者の地理的な特性となります。

例えば、東京都在住であるとか勤務先が横浜であるとか、
あるいは日本で働く東南アジア出身者などといった形です。

「心理的変数」は、価値化や嗜好性、性格など消費者の内面に関する特性です。

例えば、趣味がキャンプ、スポーツ観戦が好き、お酒をよく飲む、品質より安さ重視
などといった形で区分化します。

上記4つの変数を使って細分化した市場の中で、どの市場が自社にとって
大きすぎず小さすぎず適当な大きさの市場であるかを検討するのです。

また、細分化したどの市場で自社や自社の製品が強みを発揮できるのか
といったことも考えなければいけません。

上記4つの変数はあくまで一般的なSTP分析で使われるもので、
必ずしも使わなければならないものではないです。

近年は消費行動が多様化していることもあって、
上記4つの変数では細分化しきれないケースもあります。

Targetingはターゲットとなる市場を選ぶこと

STP分析の2つ目のTはTargetingで、
自社や自社の製品がターゲットとする市場を選ぶプロセスとなります。

要するに、
先のSegmentationで細分化した市場の中でどこを狙うのかを決めるということです。

Targetingには
 ・集中型マーケティング
 ・差別型マーケティング
 ・無差別型マーケティング
のいずれかの手法を用いるのが一般的です。

「集中型マーケティング」は、自社や自社の製品が最大限強みを発揮できる市場に
絞り込んでアプローチするマーケティング方法です。

経営資源を集中的に投下できるので、
絞り込んだ市場に居る消費者に対して効果的なアピールができます。

ただ市場を絞り込むことでターゲットが狭くなるため、超高級品やニッチな商品など
コアな顧客が存在している場合でない有効とは言いにくいです。

また経営資源を集中的に投下することになるので、
市場の絞り込み方を間違えると方向転換が難しく経営危機に陥る恐れもあります。

「差別型マーケティング」は、細分化した中からいくつかの市場をピックアップして、
それぞれの市場のニーズに合った製品・サービスを提供する方法です。

自動車メーカーが、コンセプトやグレード、価格が違う複数の車種の車を
販売しているのが、差別型マーケティングの典型です。

自動車メーカーに限らず多くの企業が差別型マーケティングを行っており、
一般的なTargetingの手法と言えます。

ただ複数の製品・サービスを同時に取り扱うことになるため、経営資源を
製品・サービスごとに配分しなければならず金銭的・人的コストがかかります。

規模が一定程度以上の企業であれば差別型マーケティングが行えますが、
経営資源に余裕のない小規模な企業にはあまり適した手法ではありません。

「無差別型マーケティング」は、
Segmentationで細分化した市場の全てに同じ製品・サービスを提供する手法です。

細分化した市場で、
共通するニーズを満たせる製品やサービスが提供できる場合には有効となります。

全ての市場で製品・サービスを提供するので、
集中型や差別型よりも多くの金銭的・人的コストが必要です。

すでに確固たる地位を築いた大企業など、
かなりの体力がある企業でないとすぐに経営が傾く恐れがあります。

また近年は消費者のニーズも多様化しているため、
全ての市場に共通するニーズを見出すことが難しくなっています。

多様化したニーズに応えるあらゆるジャンルの製品・サービスが溢れている現代では、
無差別型マーケティングは通用しない可能性が高いです。

Positioningは市場内の立ち位置を決める

STP分析のP、Positioningではターゲットに定めた市場内での自社や自社の製品の
立ち位置を決めます。

Positioningの分析では、
X軸を「価格」、Y軸を「品質」とするマトリクス表を使うのが一般的です。

マトリクス表の右上が「高品質・高価格」、右下が「高品質・低価格」、
左上が「低品質・高価格」、左下が「低品質・低価格」となります。

まず、競合する他社や製品がマトリクス表の中のどこに位置しているか、
現状で自社や自社の製品がどこに位置しているかを確認します。

競合する他社や製品と自社や自社の製品の立ち位置が近いと、
差別化できずに強みを発揮するのが難しいです。

だからと言って競合とは遠く離れた立ち位置を目指すと、
市場ニーズが無い立ち位置となってしまう恐れもあります。

十分な市場ニーズがあり、
なおかつ競合と差別化できる立ち位置を探すことが重要です。

ちなみにPositioningでは価格と品質の2つの指標を使うのが一般的ですが、
別に価格と品質でなければいけないわけではありません。

また立ち位置をより正確にするために指標を多くすると、
分析が複雑になってかえって立ち位置が見えにくくなるので注意してください。

なぜSTP分析を使うのか?

マーケティング戦略を策定する際にSTP分析を用いる理由として、
1つに市場や顧客のニーズが明確になることが挙げられます。

Segmentationで市場を細分化することで、
どの市場にどの程度の規模の顧客が居るのかが明確になります。

またその顧客が製品やサービスに対して、
どういったことを求めているのかも分かってくるのです。

市場の規模や顧客のニーズが明確にならないことには、
Targetingで市場を絞り込むことができません。

またマーケティング戦略ではペルソナを設定することになりますが、
STP分析で顧客層を明確にしておくことがペルソナを設定する際の土台となります。

強みや立ち位置が共有できる

自社や自社の製品の強み・立ち位置が、
STP分析によってマーケティングを行うチーム内で共有できるのです。

マーケティング戦略では「誰に対してどのようにアピールするか」といったことを
決めることになります。

チーム内で自社や自社の製品の強み・立ち位置についての共通認識が無いと、
マーケティングの方向性が定まりません。

強みや立ち位置をチーム内で共有することは意外と難しいのですが、
STP分析によって強み・立ち位置が言語化されるので効率的に共有できます。

競合との差別化が図りやすくなる

STP分析を行うことで、
市場内で競合する他社や製品との差別化が図りやすくなるのです。

Positioningの作業で、ターゲットとなる市場内で競合する他社や製品の立ち位置を
明確にした上で自社や自社の製品が狙うべき立ち位置を探ります。

ニーズはあるけど競合が居ないもしくは少ない立ち位置が、
STP分析によって見えてきます。

競合との無益な争いを避けつつ、
市場内で勝ち残れる立ち位置を見つけやすくなるわけです。

まとめ

STP分析は、
マーケティング戦略を策定する上において重要なフレームワークの1つです。

ただしSTP分析は数十年前に提唱されたものであり、
現代のビジネスシーンにおいては万能なものではありません。

「3C分析」や「4P分析」など様々なフレームワークをSTP分析に組み合わせて、
独自かつ最適なマーケティング戦略を検討してください。