ビジネスで競合との争いを勝ち抜くためには「差別化」が必要ですが、
競合と差別化するには「ポジショニング」が欠かせません。
ではマーケティングにおけるポジショニングとは何なのかやポジショニングで
差別化する方法などをできるだけ分かりやすく見ていきましょう。
ポジショニングは市場内での立ち位置の設定
ポジショニングは一般的に「位置取り」という意味ですが、マーケティングにおける
ポジショニングは「市場内での自社の立ち位置の設定」を意味します。
自社がこれから参入しようとしている市場やすでに参入している市場には、
競合する他社や製品・サービスが存在しています。
競合する他社や製品・サービスが市場内でどういった立ち位置にあるのかを分析して、
自社が取るべき立ち位置を検討するのがポジショニングです。
一般的には、市場内でまだ競合が居ないもしくは少ないポジションを
自社の立ち位置として設定することが多いです。
競合と違う立ち位置を設定することが多いことから、
「ポジショニング=差別化」と理解されることも少なくありません。
ただ、あえて競合と近い立ち位置を設定し、
競合より安くて良いものを提供することで競合の顧客を奪うという戦略もあります。
ポジショニングで差別化するケースが多いものの、
ポジショニングと差別化は全く同義ではないので注意してください。
ポジショニングによって戦わずして勝つことも可能
ポジショニングによって市場内における最適な立ち位置が見つけられると、
競合と戦わずとも勝てるようになります。
あえて競合と近い立ち位置を設定した場合、
競合との戦いに勝たないと市場内で生き残れません。
しかし競合が居ない立ち位置が見つけられると、
戦わずして市場内での確固たる立ち位置が確立できるのです。
確固たる立ち位置さえ確立できれば、
「この製品・サービスなら○○」と多くの顧客にイメージ付けられます。
多くの顧客にイメージ付けられると、
後から近い立ち位置の競合が出現しても顧客を奪われることはほとんどありません。
ポジショニングが成功すると、競合と戦わずして市場内で確固たる地位が確立できます。
さらに立ち位置が近い競合が現れても、
その地位を脅かされる心配がほとんどないのです。
ポジショニングマップで最適な立ち位置を探す
ポジショニングでは「ポジショニングマップ」を使って、
自社が取るべき最適な立ち位置を探します。
ポジショニングマップとしては、縦軸を1つの要素、横軸をもう1つの要素とした
4分割の表を使うのが一般的です。
例えば縦軸を価格、横軸を機能とすると、
・右上 高価格で汎用性が高い
・右下 低価格で汎用性が高い
・左上 高価格で機能特化
・左下 低価格で機能特化
となります。
市場のポジショニングを分析して、
競合する他社や製品・サービスがどの立ち位置に居るのかを確認します。
ポジショニングマップで競合の立ち位置を確認すると、
必然的に競合が居ないあるいは少ない立ち位置が見えてくるのです。
ポジショニングマップは顧客目線で作る
ポジショニングマップは顧客目線で作ることが重要で、
企業目線で作ると失敗する恐れがあります。
先の縦軸を価格、横軸を機能としたポジショニングマップで、自社目線で
・競合A 少し高価で機能特化だが少し汎用性もある(左上中央寄り)
・競合B 機能特化でリーズナブル(左下)
・競合C 汎用性が高いけど比較的リーズナブル(右下横軸寄り)
と競合の立ち位置を分析したとします。
自社は右上の高価格で汎用性の高いポジションを取れれば、
市場内で一定の地位が確保できると考えられるのです。
ところが顧客目線だと
・競合A 高価格で汎用性もある(左上)
・競合B 機能特価で比較的リーズナブル(左下中央寄り)
・競合C 汎用性が高く少し高価(右上横軸寄り)
となって、自社目線と立ち位置がズレていることもあります。
自社目線だと競合Aよりも汎用性が高く、
競合Cよりも高価格帯のポジションを狙うことになります。
ところが顧客目線だと競合Aより汎用性が高いとオーバースペック、
競合Cより高価格帯だと高価すぎると感じてしまうのです。
オーバースペックで高価すぎる製品に顧客の需要はありませんから、
競合が居なくても市場内で確固たる地位を築くことはできません。
ポジショニングマップはあくまで顧客目線で作らないと、
市場の現状を正しく把握できず、自社が取るべき最適な立ち位置を見誤ってしまいます。
ちなみに例ではポジショニングマップの要素として価格と機能を使いましたが、
それぞれの企業や製品に合った要素でポジショニングマップは作ってください。
差別化できる立ち位置であるか
ポジショニングマップで競合の居ないあるいは少ないポジションを目指すとして、
その立ち位置で競合と差別化が図れるかも考えないといけません。
先の例で言うと、汎用性の高さで一定の支持を得ている競合Aと汎用性で差別化が
図れるかということです。
製品にもよりますが、競合Aの汎用性が高水準にある場合、
それより汎用性を高めると顧客にとってはオーバースペックとなってしまいます。
オーバースペックにならないように汎用性を高めるとして、高水準の汎用性を誇る
競合Aとどうやって差別化を図るのかを考えないといけないわけです。
また自社目線ではしっかりと差別化したつもりでも、
顧客に差別化していることが伝わらないと意味がありません。
ここでも、
あくまで顧客目線での差別化が明確にできるかどうかを考えないといけないのです。
企業の理念やイメージとポジショニングに整合性があるか
競合の居ない・少ないポジションを見つけたとして、そのポジションが自社の理念や
イメージと整合性が取れているかも考える必要があります。
例えば、これまではリーズナブルな製品を提供していたYという企業が、
競合が居ないからと高価格帯の製品を発売したとします。
顧客は「Yと言えばリーズナブル」というイメージを持っていますから、
Yの高価格帯製品は受け入れられない可能性が高いです。
また「サステナブル(持続可能)」を理念としている企業が、
使い捨ての製品を発売するのは理念に反しています。
いくら競合が居ない・少ないからと言って、ポジションと企業の理念・イメージが
合っていなければ顧客に受け入れられないのです。
ポジショニングが成功した事例
現在市場内で確固たる地位を確立している企業のポジショニングの事例で、
分かりやすいものをいくつか紹介します。
ポジショニングに成功した事例の1つ目は「ワークマン」です。
(https://bookplus.nikkei.com/atcl/catalog/20/279560/)
ワークマンは現在でこそ日常使いできる衣料品を取り扱っていますが、
元々は作業服などを主に取り扱うお店でした。
作業服など機能性の高い衣料品は需要がそれほど高くないので、
他のお店やブランドでは少し価格が高くなっています。
ワークマンは、リーズナブルに機能性の高い衣料品を提供するポジションが
アパレル市場で空いていることに気付いたのです。
リーズナブルに機能性の高い衣料品を提供するポジションに定着したワークマンは、
2023年3月期で1600億円を超える売り上げを記録しました。
最近はリーズナブルに機能性の高いだけでなくデザイン性にもこだわった、
女性も日常使いできる衣料品も取り扱うよういなっています。
レッドブル
ポジショニングで大成功を収めた企業として「レッドブル」も挙げられます。
(https://dime.jp/genre/1512628/)
今やエナジードリンクは老若男女問わずに利用していますが、
かつては「栄養ドリンク」と言われて中高年男性の飲み物とされていました。
すでに栄養ドリンクは大きな市場として存在していたものの、
「若者」「女性」とブルーオーシャンをレッドブルは見つけるのです。
スタイリッシュなデザインに加えて大学生に無料で配布するというマーケティングを行い、
一定の熱狂的なファンを生み出します。
その熱狂的なファンの輪が広がり、
現在では世界で年間52億本も売れるエナジードリンクとなりました。
現在は後発のエナジードリンクの勢いに押されていますが、
現在でも「エナジードリンク=レッドブル」のイメージが根強く残っています。
モスバーガー
日本発祥のファストフード店である「モスバーガー」もポジショニングが成功した
事例です。
(https://www.mos.jp/omoi/)
モスバーガーは、前年にマクドナルド日本1号店がオープンしてハンバーガーブームが
起こっていた1972年に創業します。
マクドナルドとの差別化を図るため、モスバーガーは高価格ながら高品質素材を使った
「日本人の口に合うハンバーガー」の提供にこだわりました。
結果「値段は少し高いけどおいしい」と評判になり、現在日本における
ハンバーガー市場でマクドナルドに次ぐ2位の地位を確立しています。
給料日前でお金が無いときはマクドナルド、少しお金に余裕があるときは
モスバーガーと使い分けていた人も多いのではないでしょうか。
まとめ
ポジショニングは市場内での自社の立ち位置を設定するためのフレームワークです。
ポジショニングは差別化を前提としているわけではありませんが、
競合と差別化するために用いられることが一般的となっています。
自社の立ち位置を設定したら終わりではなく、
ポジショニングの後にどういった施策を行うかも重要です。