マーケティングでは「顧客を知ること」が重要ですが、
顧客を知るには「セグメンテーション」という作業が必要です。
ではセグメンテーションとはどういった作業なのか、
できるだけわかりやすくお話ししましょう。
セグメンテーションは顧客を分類すること
「セグメンテーション」は日本語で区分を意味していて、
マーケティングにおいては「顧客を分類すること」を指します。
一口に顧客と言っても色んな人が居り、性別も年齢も職業も趣味嗜好もバラバラです。
性別や年齢などがバラバラな顧客を、
様々な条件で細分化して分類するのがセグメンテーションなのです。
例えば、男性・女性といったように性別で区分するのもセグメンテーションですし、
20代・30代など年齢で区分するのもセグメンテーションとなります。
実際のセグメンテーションでは、20代・女性・独身・都市部在住などといったように
複数の条件を組み合わせて細かく分類します。
セグメンテーションの目的は「顧客を知ること」
マーケティングでセグメンテーションを行う目的は「顧客を知ること」です。
高度経済成長期には、不特定多数の一般大衆が顧客でした。
高度経済成長期はまだまだモノが少ない時代だったので、
ターゲットを絞らなくても宣伝効果が見込めましたし売り上げも伸ばせました。
しかし高度経済成長が終わってモノが行き渡ると、
顧客のニーズや購買行動が多様化していきます。
顧客のニーズや購買行動が多様化すると、
ターゲットを絞らないマーケティングでは宣伝効果も売り上げアップも見込ません。
多様化したニーズや購買行動に対応するにはターゲットを絞って、
ターゲットに届くアプローチをしなければならないのです。
ターゲットを絞るにはセグメンテーションが必要ですから、
現代のマーケティングにおいてはセグメンテーションが重要というわけです。
広告媒体の多様化
顧客側のニーズや購買行動が多様化しただけでなく、製品やサービスを提供する側の
広告媒体が多様化していることもセグメンテーションが必要な理由となっています。
インターネットが一般的に広く普及するまでは、
製品やサービスの広告が出稿できる媒体は新聞やテレビなど限られていました。
新聞やテレビは老若男女の目に触れるので、
細かい顧客のセグメンテーションを行う必要がなかったのです。
ところがインターネットが広く普及してからは、新聞やテレビに加えて
Webサイト、SNS、YouTubeやTikTocなどの動画サービスにも広告が出せます。
性別や年齢などによってよく利用する媒体が違っており、大きな宣伝効果を見込むには
自社の顧客層に適した媒体に広告を出すことが求められるのです。
自社の顧客層に適した媒体が何なのか見極めるには、
セグメンテーションで自社の顧客層を分類することが必要というわけです。
一般的によく行われている顧客のセグメンテーション
どういった条件でセグメンテーションするかはそれぞれの企業によって違いますが、
セグメンテーションで一般的によく使われる条件がいくつかあります。
1つは「人口動態(デモグラフィック)変数」で、
・年齢
・性別
・家族構成
・職業
・収入
など人口統計的な条件を使って分類する方法です。
客観的なデータなので収集や測定がしやすく、それでいてニーズや購買行動と
関連性が高いので顧客のセグメンテーションではよく用いられます。
2つ目は「地理的(ジオグラフィック)変数」で、顧客が「どの地域に住んでいるか」
「どの地域で働いているか」といった地理的な条件を使って分類する方法です。
日本だけで見ても北海道と沖縄では気候が全然違いますから、
食料品や電化製品、衣服などに対するニーズも全然違います。
世界に目を向けると気候だけでなく文化や生活習慣、経済力なども違います。
世界を相手にマーケティングを行う場合には、地理的変数を用いたセグメンテーションが欠かせないのです。
3つ目は「心理的(サイコグラフィック)変数」で、
顧客個人の性格や価値観、趣味嗜好といった条件で分類する方法です。
例えば、性格だと「社交的」「内向的」「野心的」「神経質」など、
価値観であれば「ブランド重視」「オーガニック好き」などの条件で分類します。
心理的変数は主観的なデータのため、以前は精度の高いデータを収集することが
難しかったので顧客のセグメンテーションで用いられることはあまりありませんでした。
しかしインターネットが普及した現在では精度の高いデータ収集が可能なので、
最近は顧客のセグメンテーションで用いられることが多くなっています。
4つ目は「行動(ビヘイビアル)変数」で、顧客が製品やサービスの購入・利用に
至るまでの行動パターンを用いて分類する方法です。
例えば、購入場所や購入日時、購入回数、購入頻度などの条件で分類します。
自社でECサイトを持っている場合は、サイトのアクセス解析や
利用者の購入履歴から行動パターンに関するデータが収集できます。
その他の分類条件
先に紹介した4つの変数が顧客のセグメンテーションではよく使われますが、
絶対に先の4つを使わなければいけないわけではありません。
企業によっては、「自社にどの程度経済的価値をもたらしているか」で
顧客を分類しているケースもあります。
大きな経済的価値をもたらす顧客だけ重視するといったことではなく、
経済的価値の大きくない顧客に対してどうアプローチするかを考えるのです。
切り捨てるケースももちろんあるでしょうし、
顧客に対するコストを下げることで経済的価値を大きくするといったことも考えられます。
他にも、顧客が製品やサービスの購入・利用に至るまでのどの段階にいるかで
分類しているケースもあります。
例えば、自社の製品やサービスを知らない人に対しては認知度を上げるアプローチ、
知っているけど興味のない人には興味を持ってもらうためのアプローチ。
既に興味を持っている人には「利用したい」という欲求を喚起させる、
利用したいと思っている人には購入・利用を後押しするアプローチを考えるのです。
顧客をセグメンテーションする条件は決まっているわけではなく、
それぞれの企業、製品・サービスによって変わります。
セグメンテーションを行う前に、
まずどういった条件で分類するのが最適なのかを考えましょう。
顧客のセグメンテーションで成功した実例
顧客のセグメンテーションを行うことで、
製品やサービスの売り上げを伸ばした成功例をいくつか紹介します。
1つ目はパナソニックのノートパソコンである「レッツノート」です。
(https://panasonic.jp/cns/pc/)
レッツノートは元々ビジネスパソコンでしたが、インターネットの普及に伴って
パナソニックは一般的な用途を目的としたパソコンも手がけるようになります。
しかし一般的な用途を目的としたパソコンは売れ行きが伸びず、
一時はパソコン事業から撤退も検討されました。
そこでパナソニックは、
パソコン事業のターゲットをビジネスさらには外回りに営業職に絞ります。
国内生産で信頼性を担保、薄さを捨てて軽さを重視、耐久性や防水性、
大容量バッテリーとビジネスや外回りの営業で求められることに特化したのです。
その結果、レッツノートはビジネスモバイルパソコンとして国内シェア1位となっています。
(https://connect.panasonic.com/jp-ja/products-services/letsnote)
ホンダのスーパーカブ
顧客のセグメンテーションによって大きな成功を収めた例として、
ホンダの「スーパーカブ」も挙げられます。
(https://www.honda.co.jp/SUPERCUB/)
ホンダはセグメンテーションによって、従来のバイクのターゲット層でなかった
女性のスーパーカブに対する需要を掘り起こします。
座席前方のフレームを低くすることで、
スカートを履いた女性でも比較的簡単に座席に座れるようにしています。
またバイクの多くは前後の車輪の間にエンジンが搭載されていますが、
これだとスカートで乗ると裾が汚れるという難点があります。
そこでスーパーカブはエンジンなど機器類を全て後輪側に搭載することで、
スカートの裾が汚れるという問題を解決したのです。
さらに段差が多い日本の道路事情も考慮して、
車体を軽くしてスーパーカブを押している状態でも段差を乗り越えやすくしました。
顧客のセグメンテーションによって女性に焦点を当てた結果、
「カブ主女子」と言われる女性ライダーを増やすことに成功しました。
2024年1月現在、ホンダ公式サイトのスーパーカブのページのトップは、
スーパーカブに乗っている女性の画像となっています。
ユニクロ
ファストファッションの先駆けである「ユニクロ」は、
顧客ニーズの多様化を逆手に取ったセグメンテーションで成功を収めました。
(https://www.fastretailing.com/jp/about/frway/)
女性向けはもちろん男性向けのファッション誌は様々な出版社が出しており、
ファッションに対するニーズが多様化していることがわかります。
年齢やファッションのタイプ(ストリート系など)などによっても分類されていますが、
ユニクロは逆に顧客を細分化せずに統合したのです。
実際ユニクロは特定の性別や年齢層をターゲットにはしておらず、
老若男女問わずに着用できる衣類ばかりです。
細分化されたセグメンテーションを逆に統合することで、
特にファッションに細かいこだわりを持っていない層の需要を掘り起こしました。
まとめ
セグメンテーションは顧客を一定の条件に従って分類することで、
顧客を知る目的で行うフレームワークです。
一般的には「顧客を細分化すること」と捉えられがちですが、
ユニクロのように統合することで成功するケースもあります。
あくまでセグメンテーションは顧客を知るために行うもので、
それぞれの企業に合った条件で分類することが重要です。