与件と要件の違いは与えられた情報か求められることか

「与件」と「要件」の違いを端的に言うと「与件は前提条件、要件は必要条件」となります。

ではWeb制作の現場における与件とは何なのか、
要件とは何なのかについて詳しく見ていきましょう。

与件はクライアントから与えられる情報

与件は一般的には「前提条件」を意味しますが、
Web制作における与件は「クライアントから与えられる情報」のことを指します。

クライアントがWebサイトを作る目的はそれぞれ違っています。

「知名度を上げたい」「売上を伸ばしたい」「優秀な人材を確保したい」など、
クライアントから伝えられるWebサイトを作る目的も与件の1つです。

目的以外にもWeb制作にかける予算や人員、納期なども
Web制作における与件となります。

クリエイターはクライアントの目的に沿った内容のWebサイトを、
限られた予算内で必要な人員を使って決められた納期で制作することになります。

クライアントから与えられた情報を前提条件として作業を進めるので、
クライアントから与えられた情報がWeb制作では与件となるわけです。

要件はクライアントがWeb制作に求めていること

要件は一般的に「必要条件」を意味しますが、
Web制作においては「クライアントがWeb制作に求めていること」を指します。

クライアントはWebサイトを作る際に
 ・こういったコンテンツが欲しい
 ・こういう情報を掲載したい
 ・こんな機能を付けたい
などといった希望を伝えてきます。

簡単に言うと、このクライアントから伝えられるWeb制作に対する希望が
Web制作における要件となるのです。

要件には必須要件と希望要件がある

要件には
 ・必須要件
 ・希望要件
の2種類があります。

必須要件は「絶対に譲れない条件」で、クライアントにとってWebサイトに絶対に
盛り込んで欲しいコンテンツや情報、機能などのことです。

希望要件は「できれば実現したい条件」で、クライアントからすると
無理に盛り込まなくても良いけど盛り込んでもらえると嬉しいコンテンツなどのことです。

与件から要件をまとめて実現する

Web制作では、クライアントから与えられた情報である与件を整理して
要件を洗い出してまとめて実現することになります。

クライアントによっては漠然と「こんなことをしたい」「こういうものが欲しい」などといったアイデアだけを持ってWeb制作の依頼に来ることがあります。

アイデアという与件だけでは具体的に作りたいWebサイトは分からないので、
与件を整理して要件を洗い出す作業が必要なのです。

対話を重ねてクライアントからより多くの与件を引き出し、
引き出した与件から本当にクライアントが求めている要件を探っていきます。

洗い出した要件と予算や納期などの与件をすり合わせて実現可能な要件をまとめて、
最終的に実現可能な要件を落とし込んだWebサイトを制作するわけです。

最初から要件をまとめてきてくれるクライアントであっても、
必須要件と希望要件を切り分けて実現可能な要件をまとめる必要があります。

いずれにしてもクライアントとの対話が重要で、
Web制作においてはクライアントと密にコミュニケーションを取ることが求められます。

与件の整理

クライアントが漠然としたアイデアしか持っていない場合は、
Web制作サイドで与件を整理するところから始めないといけません。

与件を整理するには
 ・目的
 ・背景
 ・ターゲット
 ・手法
 ・納期
 ・予算
 ・競合
などの項目を押さえておく必要があります。

まず「目的」ですが、これはWebサイトを作る目的です。

知名度を上げたいだけなのか売上アップまで含めるのか、優秀な人材を集めるための
ポータルなのかなどWebサイトを作る目的をハッキリさせます。

目的によってデザインや盛り込むべきコンテンツ・情報が変わってきますから、
目的をハッキリさせておくことは非常に重要です。

次に「背景」ですが、先のWebサイトを作る目的を持つことになった背景を明確にします。

目的を達成するのにWebサイト制作を選んだ理由、
数あるクリエイターから自社を選んだ理由なども聞いておくと良いでしょう。

「ターゲット」では、クライアントがどういった層の顧客・見込み客にWebサイトを
見てほしいのかを確認します。

ターゲットの年齢や性別によってWebサイト全体の雰囲気が変わりますし、
デザインや盛り込むべきコンテンツ・情報も変えないといけません。

SNSとの連携などその後の展開にも大きく関わってくるので、
ターゲットの絞り込みは必要です。

「手法」は、Webサイトの閲覧者にどういったアプローチで情報を伝えるかということです。

具体的な手法はWeb制作サイドが提案することになりますが、
最初にクライアントに大まかな方向性を確認しておきます。

「納期」はいつまでにWebサイトを完成させるかで、この時点では○月○日という
具体的な日時でなくても○月の中頃までといった大体の納期でも構いません。

与えられる制作期間によってはできないこともありますから、
最初に納期を確認してできないことがあるならクライアントに伝えておくことも必要です。

「予算」はWeb制作にかけられるお金のことで、
予算によって作業に携わるクリエイターの数が変わってきます。

予算が少ないとクリエイターの数も少なくなり、
その上納期が短ければできることがかなり限られてしまいます。

クライアントが求める要件を満たしたWebサイトを作るには予算も重要な要素です。

最後の「競合」はクライアントが提供している商品やサービスの競合相手のことです。

競合相手との差別化や競合相手に対する優位性といったことを
Webサイトに盛り込むことになるので、競合相手に関する情報は欠かせません。

要件を洗い出す

与件を整理したら次は「要件の洗い出し」を行います。

整理した与件の目的・背景・ターゲット・手法などから、
クライアントがWebサイトに必要と考える項目を探るのです。

ある程度Web制作の経験があれば、
目的やターゲットなどからどういった要素を盛り込むのが良いのかが見えます。

クライアントに要件を提示してもらうのが難しい場合は、制作サイドから「この情報は
必要ですか?」「こういう機能は要りませんか?」など要件を提示する方法もあります。

もし「こんなサイトを作りたい」という参考になるサイトがあるなら、
それをクライアントに提示してもらうのも良いでしょう。

理想とするサイトを提示してもらう方が、
クライアントがWeb制作に求めていることが分かりやすいかもしれません。

必須要件と希望要件を切り分ける

要件をある程度洗い出せたら、
次に必須要件と希望要件を切り分けて要件の細分化を行うのです。

クライアントに洗い出した要件の中から「これは絶対に盛り込んでほしい」という要件を
ピックアップしてもらいます。

次に「絶対とは言わないけどできれば盛り込んでもらいたい」という要件を
ピックアップします。

必須要件をピックアップすることで、
クライアントがWeb制作に求めていることがより明確になるのです。

求めていることが明確になれば大体の方向性が見えてきますし、
希望要件が盛る込めるかどうかも見えてくるはずです。

実現可能な要件をまとめる

必須要件と希望要件を切り分けて要件を細分化したら、
最後に予算や納期などの与件と要件をすり合わせて実現可能な要件をまとめます。

与件として提示された予算や納期によっては、クライアントが求める要件を
全て盛り込んだWebサイトを作ることが難しいこともあります。

クライアントがピックアップした必須要件・希望要件から、与えられた予算・納期で
実現可能なものを組み合わせた要件定義書を制作サイドが作成・提示するのです。

制作サイドが作成した要件定義書を元に再度クライアントと協議して、
最終的な方向性が決まって実際のWebサイト制作へと入っていきます。

要件定義書は読んでもらわないと意味が無い

実現可能な要件をまとめたら制作サイドが要件定義書を作成しますが、
要件定義書はクライアントに読んでもらわないと意味がありません。

要件定義書を読んでもらうためには「分かりやすい要件定義書」の作成が必要です。

クライアントは必ずしも時間的余裕があるとは限らないので、
絶対に確認してもらい部分に印を付けるなどといったことをしておきます。

「印を付けた部分だけでもしっかり確認してください」と伝えておけば、
忙しいクライアントの心理的負担を軽減して読んでもらえる可能性が高くなります。

リスト化できるものはリスト化しておく

長い文章の書類は仕事上必要であってもなかなか全て読む気にはなれませんから、
リスト化できるものはリストにして要件定義書をコンパクトにしましょう。

リストや図を使うことで視覚的に確認できて、要件定義書を読む手間が少し省けます。

また文章の説明よりもリストや図の方が分かりやすいこともあるので、
制作サイドの意図がクライアントに伝わりやすくもなるのです。

文章も専門用語はできるだけ使わずに誰にでも分かる表現を用いるのがベターです。

文章が長くなると要点がぼやけるので文章はできるだけ短く、
読みやすいように適切に改行を入れましょう。

変更できるものとできないものを明確に

要件定義書では変更できるものと変更できないものを明確にしておくことも重要です。

実際のWeb制作がスタートした後で、
クライアントから変更を申し込まれることが多々あります。

軽微な変更から大幅な変更まで様々ですが、クライアントからは軽微に見えても
制作サイドからすると大幅な変更が必要なケースも出てきます。

大幅な変更は予算や納期にも関わってくるので、事前に要件定義書で
変更可能な項目と不可能な項目を示しておくと不要なトラブルを避けられるのです。

まとめ

Web制作における与件はクライアントから与えられる情報、
要件はクライアントが求めていることを意味しています。

どちらもWeb制作の準備段階で必要なものですから、
事前のクライアントとの協議で与件と要件の整理・定義をしっかりと行いましょう。